「扉の向こうで・・・」
執務室の扉に、独特のやり方でノックの音がした。
鍵を掛けていたことを思い出して、オオガヤは執務卓の上のボタンを押した。
扉が開いて、浅黒い肌に精悍な風貌の大男が入ってきた。
「お早うございます。閣下がお帰りになったと伺って・・・」
「おう、カタヤマか。戻っていたのか」
「は。予定より早く片付きましたので」
「・・・何をニヤニヤしておるのだ」
「しておりますか・・・・・・噂で、閣下が例の凄いのを、とうとう学校からさらっていったと聞きましてな」
「人聞きの悪い事を。ちゃんと卒業しておるぞ」
「はあ、3年で、ですか。そりゃまた・・・で、その宝物は今どちらに?」
カタヤマは、冗談めかして部屋の中を見回して見せた。
オオガヤは暫く目の前の大男を眺め、自分が彼に全幅の信頼を置いていることを改めて認識した。
「実は今、奥で寝ておる」
「は?閣下の私室で、ですか・・・と、これは失礼。他意はありません」
「一足早く接触出来たのは良かったのだが、途中一悶着あってな。予想はしておったのだが・・・・・・
事態が沈静化するまで、此処に置いておいた方が良かろうと思うて連れてきたのだ。
一度に色々起こって、あの子には相当応えたようだ。落ち着くまで休んでおれと言ってある」
「左様でしたか・・・ちょっと拝見しても?」
「お主も物見高いことだ。起こさぬようにな」
カタヤマが執務室の奥の陰になった一角をそっとなでると、壁の一部がすっと浮き上がり、小さい扉が姿を現した。
それに手を掛けて静かに半開きにすると、視線を内側へ巡らせる。
再びそっと閉めると、いかにも足音を忍ばせているという仕草で、オオガヤの側に戻ってきた。
「成る程。噂に違わぬと言うか、噂以上の様ですな。アレなら、いざというとき、十分武器になりますな」
オオガヤは苦い顔をして見せ、自分がその手の話題を好まないことを、カタヤマに思い出させた。
「・・・しかし、閣下に先手を打たれて、あちら様では相当いきり立っているようですよ」
「言わせておけ。あれだけの人材を浪費させるわけにはいかぬ」
「相当に入れ込んでおられますな」
「南北の二強に挟まれて、我が陣営には厳しい状況が続いておる。役に立てる者には、働いて貰わねば」
「直々に仕込まれるおつもりですな」
「・・・・・・本人にとっては、不本意なことかも知れぬが、な」
(2006.05.31)
まさかゴロさんが夢に出てくるとは思いませなんだ(嬉)
情報部内でも、路線の違いとか色々あるようです。
そうか、そう言う次第だったのか、配属になったということは (お礼粗品(4)参照)。
自分で書いといて、ちっとも知りませんでした(笑)