「巡りめぐって・・・」
(前書き)
カンベエとシチロージ、高層部時代の物語。
ふたりは高々度を周回して臨戦態勢にある部隊の旗艦に乗務中。
ただし、このお話はギャグです。そのつもりでご覧下さい。
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「副長……ちょっとお話があるのですが」
巡回を兼ねて旗艦の通路を歩き回っていたシチロージは、自分の中隊の若い兵士ヒラタから声をかけられた。
中隊の副長以上の職務に就任するとシフト勤務を免除されるのだが、シチロージにとっては勝手が違い、退屈しかけていたところだった。そこで求めに気軽に応じて、誘われるままに談話室の椅子に腰を下ろした。その周りには、声をかけたヒラタ他数名の若い連中が席を占めた。
「あの……」
「何をもじもじしてるんだ。顔を見れば部署は色々だが、確かお前達、同期の配属じゃないか」
互いに譲り合ってなかなか話を切り出さない相手に焦れて、シチロージの方から口を開いた。それに励まされるかのようにヒラタが少し身を乗り出す。
「まことにぶしつけな質問で恐縮ですが、副長は、その……中隊長殿と何か……お約束とかなさってませんか」
「約束? カンベエ様とか? どういう意味だ」
自分とほとんど年の変わらない若い隊員達が互いに肘でつつき合って目配せしたり含み笑いしたりするのを見て、シチロージは合点がいった。
「そんなものは何もないよ」
椅子の背もたれに寄りかかるとさらりと答えたが、無意識に口調が強くなる。そんなモノ、あるわけないじゃないか。相手はあのひとだ。
返事を聞いて一同の顔がパッと輝いた。そして全員が、仲間のひとりを集中的につつき始めた。
「用は済んだか。俺はこれで戻るぞ」
「あっ、待って下さい。お話はこれからなんです」
腰を浮かしたシチロージを、ヒラタが慌てて引き留めた。他の者も熱のこもった眼で見ている。
渋々腰を下ろした目の前のテーブルには、一口飲んでそのままのお茶が、先細りの円筒形の湯飲みの中でまだ湯気を立てている。一口だけ……一度だけ。その言葉が、シチロージの中でこだました。その苦い想いをどこかに置き去りにしたくて、無意識に湯飲みに手を伸ばして持ち上げる。
「実はこのトウスケが……その……中隊長殿に夢中でして」
ヒラタの言葉に、シチロージは手にした湯飲みを落としそうになった。はねて手にかかった液体の温度にも気付かず、名前を出されて真っ赤になった隊員を見つめる。他の者が慌てて湯飲みを受け取り、こぼれたお茶を拭き取ってくれた。
「副長も驚かれたでしょう。我々も最初打ち明けられたときは、何を言ってるんだって笑い飛ばしたんですがね。中隊長殿には副長という昔からの相棒がおられるから、お前なんか眼中にないよってね」
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