「護り刀」 

(前書き)
カンベエとシチロージが、東方(ひがしがた)陣営の高層部隊(対流圏と成層圏の境界程度の高空域に展開する)に所属していた時代の物語です。



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「中隊長殿、斥候が戻りました」
伝令とほぼ同時に、斥候に出ていたシチロージ他二名が戦艦の艦橋に戻ってきた。
入るなり、シチロージはまず狭い艦橋内を何気ない顔つきで見回した。艦橋付きの将校や兵士が慌ただしく立ち働いている。中央には、小さいテーブルの側に今回の作戦行動の指揮官であるカンベエが座っていた。

「ご苦労だった」
それだけ言うと、カンベエはテーブルに視線を戻した。シチロージがひとりその傍らに寄り、テーブル上に広げられている空域図の一点を指す。どちらも余計なことを言わないのはいつも通りだった。

「迎撃用火器類の設置を確認しました。こことここに三門ずつ。それに恐らくこちらも台座になるでしょう。側面には、すでに滑走路入り口らしい枠組みが」
「規模はどれ程と見積もるか」
「この五日間の進捗ぶりから判断して、最終的には中程度の出城ほどの能力を備えるようになるかと思われます」
「ふむ……お前は攻撃の頃合いをどう見る」
「ある程度装備を揃えさせてからの方が、北軍に与えるダメージは大きいでしょうが、但し」
「揃いすぎては攻める我らの危険も増す」
年若い部下は、肯定の印として無言で頷いた。

「基礎が六分ほど出来れば搬入も本格化します。作業効率はこれまでより上がるでしょう。二日後に再び斥候に出て確かめたいと思います」
「分かった。下がって休んで良いぞ」
「は。有難うございます」
シチロージは連れの二人に合図して下がらせ、自分はその場に残った。
テーブルの空域図に報告を書き込もうとしたカンベエは、目の前の体が視界から去らないので顔を上げた。

(まだ何かあるのか)
カンベエは眼で問いかけ、シチロージも声を出さず表情だけで答える。
(内密でご相談が)
カンベエは了解した印にひとつ瞬きをすると、退出するシチロージの背中を見送ってから席を立った。
「カワイ」
計器盤に見入っていた航行長が振り返る。
「この座標でこのまま待機だ。調べ物をしてくるから後を頼む」
「承知しました」

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