『空中楼閣』
カンベエやシチロージと同じ部隊に所属する雷電モガミは、戦闘後に姿を消した部下の探索に出た折りに、同行した機械ザムライの傭兵部隊の誘いを受ける。
機械のサムライが支配する世界を建設するという彼らの企みの詳細を求めて、モガミは単身謎の集団の懐へ飛び込んで行った。
一方、そのモガミや不明の仲間を案じるカンベエ達もその後を追跡する・・・
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序章 追跡
「如何かな、モガミ氏(うじ)」
紅蜘蛛型サムライは浮揚する高度を下げてモガミに近づき、グイと覗き込んだ。
雷電である自身よりも大柄な紅蜘蛛に間合いに入られたような圧迫感を感じて、モガミは一瞬たじろぐ。戦さ場でもないのに機械の体同士がそれ程接近することは滅多にないのだ。
「しかし、ササラギ殿、機械ザムライによる支配とは……」
「必ず実現する。そして、我らがその頂点に立つのだ」
「あまりに気宇壮大で、にわかには信じかねるな」
「お主のためらいは良く分かる。かつて某も持ちかけられたときはまず笑い飛ばしたものだ。しかも、お主には軍での立場もあることだしな」
「しかし、そこまで打ち明けられては、断ることは難しそうだ」
「その通り。何より、お主が断るとは露ほども思うてはおらぬがな」
紅蜘蛛は機械の体をわずかに揺すりながらふぉっふぉっとくぐもった笑い声を漏らし、身軽に体を捻ると、後退して距離を取った。
モガミは周囲を見回した。
紅蜘蛛ササラギの率いる傭兵部隊が自前で持ち込んだ攻撃艇の中に、自分がまんまと誘い込まれたことは明らかだった。
この部屋にいるのはササラギ配下の機械ザムライが五名。同行の自分の部下は、傍らに止めた自艇で待たせてある。
戦闘の後所在不明となった部下の探索のために、ササラギ達とともにここまでやって来た。そして唐突に、お主を優れたサムライと見込んで、と持ちかけられた計画の真偽をモガミは計りかねていた。
「ともかく先ずは、部隊を離れてこちらへ来ているという我が配下の者らに会わせて貰いたい」
「会うてどうする。あの者らは我らに賛同して軍を抜けたのだ。上官だったお主には合わす顔がないと思うておる。お主も加わると決まったらば、その時に改めて対面すれば良かろう」
「彼らの意志を確かめたい」
「くどいぞ、モガミ」
敬称すら省いた紅蜘蛛の断固たる態度に、モガミはいよいよ自分が引き返せないところまで追い込まれたことを感じた。
先の戦闘が終了したとき、配下の雷電数名が帰還しなかった。引き上げ命令には応答したが姿を見せなかったのだ。
いずれも信頼の置ける部下であり練達のサムライであった。
その探索に、余力を残していたササラギ率いる傭兵部隊が加わった。空間に残されたわずかな手掛かりを辿ってこの座標――生身の人間は生存できない成層圏――まで到達したとき、突如計画を明かされたのだった。
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